平成29年度決算に対する討論原稿

 ただいまから、板橋区議会民主クラブを代表し、平成29年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算、国民健康保険事業特別会計歳入歳出決算、介護保険事業特別会計歳入歳出決算、及び後期高齢者医療事業特別会計歳入歳出決算を認定することに賛成の立場から討論を行います。
 平成30年1月の閣議決定によると「平成29年度の日本経済は雇用・所得環境の改善が続く中で、緩やかに回復している。また、海外経済が回復する下で輸出や生産の持ち直しが続くと共に、個人消費や民間設備投資が持ち直すなど民需が改善し、経済の好循環が実現しつつある」としています。
 この政府の見解のみならず、様々な指標が好転しているのに、なぜ、家計も企業もため込むのでしょう?
 この10年の家計の預金・現金残高は18%の増加、金額では+147兆円もの増加です。預金をため込み、大きな消費につなげないのはなぜなのでしょうか?その理由はバブル時のような給与アップは望めませんし、将来への不安が拭えないのが現実だからと言われています。
 地震・かつて経験したことのない豪雨・原発汚染・年金・医療・介護そして戦争…この不安を払拭して安心・安全な社会を提供することが、政府や自治体の責務であります。
 今、いの一番にやることは決して憲法改正ではないと思いますし、消費税増税の様々なインセンティブを選挙目当てに考えることでもないはずです。 そんな背景を考えながら、平成29年度歳入・歳出決算について述べたいと思います。

 一般会計における歳入の根幹はもちろん板橋区の皆さんからいただく特別区税でありますが、これは有り難いことに納税義務者の増加により昨年比6億82百万円増の456億55百万円と、6年連続の伸びとなり、30年度も引き続き増加の見込みとなっています。 
 しかし、割合として最も大きな特別区交付金は法人住民税の一部国税化の影響もあり、12億86百万円減の664億43百万円となりました。30年度予算は、固定資産税と市町村民税法人分の増を見込んで増加を見込んでいますが、アメリカ合衆国と中国の貿易戦争の影響がいつなんどき、リーマンショックのような世界規模の激震をもたらすのかは不透明であり、行財政改革は不断の見直しと努力が必要です。

 次に私が危惧をしているのがたばこ税の落ち込みです。平成27年度は37億68百万円、28年度は36億41百万円、29年度は34億60百万円と減少し、30年度予算では33億89百万円と続けての減を見込んでいます。今後、受動喫煙防止条例の行方いかんでは、益々、愛煙家にとっては大変なことになっていきます。たばこの値上げが行われて、普通は一旦、たばこ税は増収になるのがそうもいかなくなっています。板橋区では、今後、公共施設内での禁煙に踏み切ると伺っていますが、では、愛煙家はいったいどこで喫煙をするのでしょうか?路上喫煙者が増加し、ポイ捨てが増加、受動喫煙や子どものやけどなども心配されます。東京都からの補助金を利用しつつ、まだある財源を使って、完全なる屋内喫煙場所を区内の公共施設に一定程度設置する一方、歩きたばこ全面禁止を目指すなどを考えるべきと提言します。 

 また、もうひとつ心配なのは、ふるさと納税による税収減です。ふるさとチョイスやさとふるなどの宣伝もあり、特産品でもなんでもないものによる返礼品競争がまだまだ続いています。これ以上、返礼品目当てに寄附が流出していくのは看過できません。板橋区でも世田谷区や港区などのように30億円規模に膨らむ可能性がないわけではありません。30億円と言えば、学校を一つ改築あるいは大規模改修できてしまう額となります。現在、政府による明確な規制は示されていません。
 荒川の花火大会の指定席券や区民まつりや農業まつりでの観光大使との2ショット撮影権利とか、板橋のいっぴんによる返礼とか、板橋区が税収を確保するための各会派からの提案も続いています。早急な対応を求めます。

 続いて、歳出について申し上げます。
 まず、各会派から要望の大きかった、小中学校の体育館の冷房化についてです。ほぼ全会派の要望であることが決算調査特別委員会で明らかになりましたが、板橋区はまずは普通教室の冷房の更新から行うということを繰り返して答弁しています。
 しかし、今年の天気がたまたま異常であったわけではなく、今後、普通に毎年繰り返される可能性が大なのです。子どもたちの健康と大きな災害時の避難所としての機能をも勘案したら、やらない選択肢はないはずです。幸い、東京都からの大きな補助も見込めるようです。
 しかも、その補助金は普通教室の冷房の更新に転用はできないはずです。板橋区は乗り遅れてもいいのでしょうか?ため込むだけが将来にわたる安心安全施策ではないはずです。板橋区民の将来不安に応えることにもなるはずです。
 答弁の中にありましたが、小中学校の令達予算に求めるのはあまりにも酷です。ないよりはましかもしれませんが、一台1万円前後の工業用扇風機4台を買っても熱い空気をかきまわすだけです。しかし、体育館や工場などの専用の大型冷風扇になりますと、9年レンタルで月に4万円ほどになり、令達予算とはいかないのです。ぜひ、計画的に小中学校の体育館の冷房化を検討していただきたいと強く要望いたします。 

 次に要望の大きかったのは、ゲリラ豪雨や西日本豪雨災害規模の豪雨に対する防災施策についてです。板橋区は50mm対応ができていますが、このところの降雨は1時間に50mmでなく、30分で50mmなのです。つまり時間換算100mmにも及ぶと言うことです。東京都下水局に対して75mm対応を求めていることは伺っていますが、これからも強く強く東京都に要望を挙げていただきたいと思います。また、道路冠水が頻繁に起こる地域には、貯留管や調整池などの設置を検討していただき、土嚢ステーションの拡充や高齢者世帯・障害者世帯などへの土嚢運搬サービスの強化と止水板がより設置しやすくなるように補助金の拡充と止水板設置補助の広報宣伝をしていただきたいと思います。

 次に大きな街の再開発事業についてです。
 まずはJR板橋駅のJR東日本と板橋区有地の一体化活用再開発事業についてです。板橋区はあくまで土地を70年間、29億4500万円で貸すだけというスタンスなのでしょうか。事業主体ではないからでしょうか、インターフォーラム構想によって借りるフロアで行う公共的な事業がまったく見えてきません。提案された事業を家賃を支払って黙々とこなすというわけではないでしょうから、区民のために地元のために何をしたらよいのか、採算性を追求するのか、区民福祉の向上を目指すのか、もっと積極的に関わっていただきたいと思います。
 また、その眼前に予定されている西地区再開発事業ですが、前述の再開発ビルとウインウインの関係になるよう、商業施設のコンセプトなど、被ることなく共に栄えるよう、板橋区の積極的関与を求めます。
 そしてその間に再整備される駅前広場でありますが、単にバスやタクシーなどの乗降場としての機能だけでなく、2つの再開発事業を繋ぎ、区民や利用客の憩いの場、さらにイベントスペースとしての機能をも有するように求めます。

 次は高島平グランドデザインです。残念ながら、板橋区が地域住民と年月をかけて考えてきたはずの高島平の絵が見えません。旧高島七小跡地・高島平区民館・図書館はどうするのか?URとの話し合いはどうなっているのか?総括質問での答弁を聞いていても、さっぱりわかりません。
 今年度中にどういう方向でどうしたいのかを明確にしていただき、地元の皆さんの理解を得る作業に入らなければ成りません。区民館と図書館を単独で建て替えするだけでは、金がかかるだけですから、そんなことはしないと思いますが、板橋区は再開発事業がお上手でないという悪評があります。板橋区が主体となって、箱だけ立派な再開発でなく、なるほどこれならという素晴らしい再開発事業を発表されますことを期待しております。

 次は、大山のまちづくりです。総括質問の答弁によって、補助26号線の延伸のための土地の買収に応じた箇所がまだわずか4件とのことでした。このままの状況では平成32年度中の完成は危ういのではないでしょうか。
 その要因となっているのがクロスポイントの再開発事業と東上線高架化に関わる問題ではないでしょうか?クロスポイントでは当初は、26号の延伸によって立ち退きになった店舗の皆さんは、その再開発によってできる商業ビルの1~2階に、住宅を立ち退かれた方は、クロスポイントのビルの上層階またはピッコロスクエアにできる集合住宅に入居するという身の丈に合った再開発のはずでした。
 しかしながら、クロスポイントとピッコロスクエアの再開発は今では、まったく別物として独立した形で進んでしまい、ピッコロスクエアの計画は大きく遅れています。そしてクロスポイント再開発では、元々の計画以上にマンションが高層化して、当初はアーケードを100m外すというはずがいつのまにか140m。さらには今では170m外すとも言われています。これでは、当初から言われていた商店街の分断になるのではという地域の不安は払拭されません。
 また、東上線の高架化が発表されて以降、駅前のアーケードも外さなくてはならないということが明るみにでたことで、商店街としては、話が違うではないか?という不満の声が上がっているのです。是非とも、東京都と協力して、というより、東京都を牽引するような馬力を持って、この事業にあたっていただきたいと思います。
 そして追い打ちをかけるように駅前広場の問題が浮上しています。その広場計画案にかかり、立ち退きを余儀なくされる皆さんにとっては寝耳に水のことでしょう。どこに広場を設置するかによって、どのような皆さんが立ち退きに応じられるか、あるいは出来ないかの調査も独自に個別にしてからでなくてはならなかったのではないでしょうか?代替地・転居地をクロスポイントやピッコロスクエアを含めた大山の別の地に求めるとか、大山東町側にもっと大きくエリアを拡げて再開発ビルを作るとか、逆にハッピーロード側に拡大し、大山東町側は縮小するとか、様々な方策を考え抜いて、是非とも多くの皆さんのご理解を得て、誰からも愛される駅前広場が出来ることを願っています。

 次にいくつかの要望事項を申し上げます。
 まず、発達障がい者支援センターは、当事者、関係者の意見を取り入れ、障がい特性に配慮した施設とし、専門性が高く、地域に精通したセンター長を選任するよう求めます。

 次にMR、麻疹、風疹、おたふく風邪、ロタウイルス、高齢者用肺炎球菌の予防接種については、住民税非課税世帯の自己負担をゼロにするよう求めます。 

 次に保育施設については、0.1.2歳児の定員増を要望すると共に、来年の保育料無償化の対象外となる認証保育所や認可外保育所入所者への負担軽減策を実施していただきたいと思います。

 次に児童虐待防止の啓発と児童相談所の区移管に向けて、優秀な人材を確保し、育成することを求めます。

 次に、小中学校の不登校対策、いじめ対策、学級崩壊対策などに加え、教員への暴行に対しては、教育委員会として全面的にバックアップ体制を講じ、また、教員の多忙化軽減に努めていただきたいと思います。

 最後に旧大山小の跡地の私有地部分の集合住宅がほぼ完成しました。残った区有地部分については、事業者が集合住宅周囲の道路拡幅工事を終えた後、境界道路の付け替え工事、さらに区有地と現板橋交通公園との一体化公園改修工事を予定しているはずです。
 地域の声を生かした新しい公園づくりと管理棟の建て替え・移築等は大きな予算を伴うものですから、すぐに行えとは申しません。地域と議会に対しての密な報告を怠らず、計画的に実行していただくよう要望いたします。

 最後に3特別会計について申し上げます。
 国民健康保険事業特別会計については、一般会計からの繰入金が35億86百万円となっている一方で、不用額34億9百万円、予算執行率95%、歳計剰余金45億96百万円という数字は、いささか予算執行上、問題があるのではないでしょうか?
 また、国民保険料の収入率は73.2%とこの10年で最も高い数値は残したものの、収入未済額41億60百万円という数字は褒められたものではありません。
 しかしながら、保険料が大幅に上がってきていることも一つの要因であります。何らかの保険料の値上げ抑止策や低所得者対策も講ずる必要もご検討いただきたいと思います。
 いずれにしても3特別会計ともに収入率の向上に努め、滞納が生じた時には原因の把握に努め、実情に合わせた対応策を求めます。

 以上、意見と要望を述べて参りましたが、区民の安心安全を大前提にして、未来を背負ってたつこどもたちの保育や教育に、将来の安心のための社会保障制度の維持に、公共施設の維持管理と補修や改築に、ため込むだけでなく貴重な財源をどうやって割り振って使っていくのかを改めて考えていかなくてはなりません。また、将来世代との負担の公正も考えて、必要な事業では起債を恐れることなく、区民福祉の向上のため、最善を尽くすよう求めまして、平成29年度東京都板橋区一般会計歳入歳出決算、他、3特別会計歳入歳出決算を認定することに賛意を表して討論を終わります。
 


立憲民主党 板橋区議会議員 おなだか勝公式サイト電話番号: お問い合わせ